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葉酸は、ビタミンB12とともに赤血球を作る「造血のビタミン」として知られる水溶性ビタミンの一種です。細胞の分裂や成長に不可欠なDNA合成を支える補酵素として働き、妊娠初期には胎児の神経管形成に重要な役割を果たします。
ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜、レバー、納豆など幅広い食品に含まれていますが、熱や光に弱く、調理により失われやすい特性があります。
妊娠を計画している女性には、食事に加えてサプリメントから1日400μgの摂取が推奨されており、適切な摂取により神経管閉鎖障害のリスクを約70%低減できることが報告されています。
葉酸は、DNAやRNAなどの核酸やたんぱく質の生合成を促進し、細胞の生産や再生を助ける働きがあります。細胞が分裂する際には、遺伝情報を正確にコピーする必要がありますが、この過程で葉酸は補酵素として重要な役割を果たしています。
核酸の生合成に葉酸が必要であり、葉酸が不足すると核酸の合成に支障が生じ、全身の約270種類の細胞の分裂や分化に影響が現れます。特に細胞分裂が活発な組織ほど、葉酸不足の影響を受けやすくなります。
体内では葉酸は単独で働くのではなく、他のビタミンB群と協働して機能を発揮します。特にナイアシン(ビタミンB3)は、サプリメントに使用される葉酸を補酵素型に変換する際に必要です
葉酸はビタミンB12とともに赤血球の生産を助けるビタミンで、「造血のビタミン」と呼ばれています。赤血球は全身に酸素を運ぶ重要な役割を担っており、正常な赤血球の形成には葉酸が不可欠です。
葉酸不足が起こると、赤血球の形成に異常が生じ、巨赤芽球性貧血という特殊な貧血を引き起こします。この貧血では、赤血球が正常よりも大きくなり、機能が低下してしまいます。その結果、全身への酸素供給が不十分となり、疲労感や息切れ、めまいなどの症状が現れます。
ビタミンB12と葉酸は、赤血球形成において密接に関連しています。両方の栄養素が揃って初めて、正常な造血機能が維持されるため、どちらか一方が不足しても貧血のリスクが高まります。
食品から摂取した葉酸は、体内で活性型(5-メチルテトラヒドロ葉酸)へ変換される必要があります。食事中の葉酸は消化管内の酵素によってモノグルタミン酸型となり、小腸から吸収され、主に5-メチルH4PteGlu(1)の形で体内を循環します。
この変換プロセスには、MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)という代謝酵素が関わっています。人によってこの酵素の働きには個人差があり、日本人女性の6割以上が葉酸を効率的に利用できない体質であることが研究で明らかになっています。
活性型葉酸は、細胞の修復や新陳代謝において中心的な役割を果たします。皮膚や粘膜、免疫細胞など、ターンオーバーが早い部位では特に葉酸の需要が高く、不足すると肌荒れや口内炎などの症状が現れやすくなります。
葉酸は水溶性ビタミンで、植物の葉に多く含まれ、黄色結晶で光や熱に不安定な物質です。この水溶性という特性により、体内に長期間蓄積することができず、余剰分は尿として排出されてしまいます。
日常生活において葉酸不足を助長する要因は多岐にわたります。偏食や不規則な食生活はもちろん、過度のストレスや喫煙、アルコールの過剰摂取も葉酸の代謝や吸収を阻害します。また、一部の薬剤(抗けいれん薬など)も葉酸の吸収を妨げることがあります。
葉酸は水溶性で、茹でる調理で最大50%以上が失われる場合があります Mynavi。調理損失を考慮すると、実際に体内で利用できる葉酸量は、食品に含まれる量よりもかなり少なくなってしまうのが現実です。
葉酸はその名前の由来どおり、緑の葉野菜に特に豊富に含まれています。代表的な葉物野菜の葉酸含有量(生の状態、可食部100gあたり)は以下のとおりです。
ブロッコリー1房(約15g)には33μgの葉酸が含まれ、7個食べるだけで220μg摂取できます。これらの野菜は葉酸以外にもビタミンC、ビタミンK、βカロテン、食物繊維など、妊娠中にも重要な栄養素を豊富に含んでいます。
春菊や小松菜、菜の花なども葉酸を多く含む優秀な野菜です。特に春菜の菜の花は100gあたり340μgと、野菜の中でもトップクラスの含有量を誇ります。季節の野菜を上手に取り入れることで、自然に葉酸摂取量を増やすことができます。
果物の中では、いちごが100gあたり90μgと比較的多くの葉酸を含んでいます。中サイズのいちご6〜7個で約90μgの葉酸が摂取できる計算になります。アボカドも83μg/100gと豊富で、1個(可食部約170g)で約140μgの葉酸を摂取できます。
豆類では以下のような食品が葉酸を多く含みます:
これらの食品は日常的に摂取しやすく、葉酸以外にもタンパク質や食物繊維、ミネラルなど豊富な栄養素を含んでいます。特に納豆は発酵食品として腸内環境の改善にも役立ち、葉酸の吸収をサポートする効果も期待できます。
鶏レバー1300μg/100g、牛レバー1000μg/100g、豚レバー810μg/100gと、レバー類は葉酸含有量が非常に高い食品です。少量でも効率的に葉酸を摂取できる優れた食材といえます。
ただし、レバーにはビタミンAも大量に含まれているため注意が必要です。妊娠中のビタミンAの過剰摂取は胎児に影響を与える可能性があるため、レバーの多量摂取は推奨されません。妊娠中の方は、レバーは週に1〜2回、少量を摂取する程度に留めることが望ましいでしょう。
その他の動物性食品では、鶏卵(卵黄)に140μg/100g、うに100μg/100g、いくら100μg/100gなどが比較的多くの葉酸を含んでいます。
葉酸は水溶性ビタミンで、茹でると半分ほどに減ってしまうため、調理方法によって葉酸の残存率が大きく変わります。例えば、ブロッコリーを茹でると葉酸は約60%減少し、ほうれん草では約40%まで減少してしまいます。
葉酸をなるべく損失しないための調理の工夫:
冷凍野菜でも葉酸は保持されており、ブロッコリーや枝豆、ほうれん草などの冷凍品も活用できます。価格が安定していて年中入手しやすいのも魅力です。
ビタミンCは葉酸の分解を防ぎ、安定的に吸収されるメカニズムをサポートします。葉酸は酸化しやすい性質がありますが、ビタミンCの抗酸化作用により、葉酸が体内で効率的に利用されるようになります。
ビタミンCが豊富な食材の組み合わせ例
これらの組み合わせは、葉酸とビタミンCを同時に摂取でき、相乗効果が期待できます。特に生の状態で摂取できるものは、両方の栄養素の損失が少なく理想的です。
葉酸とビタミンB12が共同でホモシステインの代謝に関わり、血液の健康維持に役立ちます Alic。ビタミンB12は主に動物性食品に含まれており、葉酸と一緒に摂取することで造血作用が高まります。
ビタミンB12が豊富な食品との組み合わせ例
ビタミンB12は野菜や果物には含まれておらず、海藻・魚介類・肉類・卵などにのみ含まれます。バランスの良い食事を心がけることで、自然に葉酸とビタミンB12を同時摂取できます。
腸内環境が整っていると、葉酸を含むビタミン類の吸収効率が向上します。パイナップルに含まれるブロメラインやパパイヤのパパインなどの消化酵素は、タンパク質の分解を助け、腸内環境の改善に寄与します。
腸内環境を整える食品の活用
善玉菌のエサとなる食物繊維も重要です。葉酸を多く含む野菜類は食物繊維も豊富なので、一石二鳥の効果が期待できます。
葉酸が欠乏すると、ビタミンB12欠乏と同様に巨赤芽球性貧血を引き起こします Tyojyu。巨赤芽球性貧血は、赤血球が正常に成熟できず、大型で機能不全な赤血球が作られる病態です。
この貧血の特徴的な症状
葉酸を適切に摂取することで、正常な赤血球の産生が促進され、全身への酸素供給が改善します。特に成長期の子どもや月経のある女性、高齢者は貧血のリスクが高いため、意識的な葉酸摂取が重要です。
妊婦が葉酸を十分に摂取することで、胎児の先天異常である神経管閉鎖障害のリスクを減らすことができ、約70%の予防効果が見られることが分かっています。
神経管閉鎖障害には以下のような疾患が含まれます
厚生労働省やWHO、日本産婦人科医会などの公的機関は、妊娠の1ヶ月以上前から1日400μgの葉酸サプリメント摂取を推奨しています。胎児の神経管は受胎から約28日以内に形成されるため、妊娠に気づく前からの摂取が重要となります。
葉酸はビタミンB6、ビタミンB12とともに、ホモシステインの代謝を促進し、血中濃度を低下させる働きがあります。ホモシステインは血管壁を傷つけ、動脈硬化を促進する物質として知られています。
ホモシステインが高い状態が続くと
ビタミンB12と葉酸が動脈硬化の危険因子と考えられているホモシステインを、メチオニンに変換する反応を助けることが示唆されています Alic。葉酸を十分に摂取することで、心血管疾患の予防効果が期待できます。
葉酸と精神面の関係について、近年さまざまな研究が行われています。葉酸は神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンの合成に関与しており、気分の調整に影響を与える可能性があります。
葉酸が不足すると、身体の不調だけでなく、気分の落ち込みなどこころにも様々な不具合を引き起こします。うつ症状との関連も報告されていますが、まだ研究段階であり確定的ではありません。
ストレスが多い現代社会において、葉酸は精神的な健康維持にも寄与する可能性がある栄養素として注目されています。ただし、精神症状の改善を目的とした葉酸摂取については、必ず医師に相談することが大切です。
葉酸欠乏性貧血の初期症状として、日常生活での疲労感や息切れが現れます。これは赤血球の機能低下により、全身への酸素供給が不十分になるためです。
葉酸欠乏性貧血の特徴的な症状
ビタミンB12欠乏による貧血との判別が重要です。両者は症状が似ていますが、ビタミンB12欠乏では神経症状(手足のしびれ、歩行困難など)がより顕著に現れる傾向があります。血液検査により、どちらの栄養素が不足しているか確認することが必要です。
妊娠期の葉酸不足は、神経管閉鎖障害以外にも様々なリスクをもたらします。
早産・低出生体重児のリスク
葉酸不足により胎盤の機能が低下し、早産や低出生体重児出産のリスクが高まることが報告されています。
流産のリスク
妊娠初期の葉酸不足は、染色体異常以外の原因による流産リスクを上昇させる可能性があります。
胎児の成長遅延
細胞分裂に必要な葉酸が不足すると、胎児の正常な成長が妨げられることがあります。
妊娠に気づくのは通常6〜8週頃ですが、その時点ではすでに胎児の重要な器官形成が始まっています。そのため、妊娠を計画している段階から葉酸摂取を心がけることが重要です。
葉酸が欠乏すると新陳代謝が盛んな口腔に炎症ができたり、肌荒れなどがあらわれます Somelife。粘膜や皮膚は細胞の入れ替わりが活発な組織であり、葉酸不足の影響を受けやすい部位です。
葉酸不足による皮膚・粘膜症状
これらの症状は葉酸単独の不足だけでなく、他のビタミンB群の不足も同時に起きている可能性があります。バランスの良い栄養摂取を心がけることが大切です。
葉酸が不足すると、ホモシステインが過剰に分泌され、血液がドロドロになり血管へ沈着し、動脈硬化を引き起こします。
ホモシステイン上昇による血管リスク
生活習慣病のリスクファクター(高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙など)と組み合わさると、心血管疾患のリスクがさらに高まります。定期的な健康診断で血中ホモシステイン値をチェックすることも予防につながります。
葉酸の耐容上限量は年齢により異なり、以下のように設定されています
この上限は「合成葉酸(サプリ・強化食品)」に対して設定されており、食品に含まれる天然葉酸は対象外です。通常の食事から摂取する葉酸については、過剰摂取の心配はほとんどありません。
葉酸摂取量を把握するためのポイント
食事由来の葉酸を概算する
サプリメント由来の葉酸を確認
食事性葉酸とサプリメントの葉酸は吸収率が異なるため、単純に合計することはできません。サプリメントのラベルに記載されている量が、実際に吸収される量に近いと考えましょう。
年齢別の耐容上限量(サプリメント・強化食品由来)
15〜17歳 | 900μg/日 |
18〜29歳 | 900μg/日 |
30〜64歳 | 1,000μg/日 |
65歳以上 | 900μg/日 |
一般成人の上限量(1000μg/日)を基準としつつ、妊娠中・授乳中の摂取は医師の指示が必要である点に触れる必要があります。妊娠中であっても、サプリメントからの摂取は400μgを基本とし、医師の指導なく増量することは避けましょう。
葉酸が重複して配合されやすいサプリメント
複数のサプリメントを併用する場合の注意点
意図せず上限量を超えてしまうリスクを避けるため、サプリメントは必要最小限に留めることが望ましいでしょう。
酸強化(フォーティファイド)食品の例
これらの食品は、通常の食品よりも多くの葉酸を含んでいます。パッケージの栄養成分表示を確認し、1日の総摂取量を把握することが大切です。特に朝食でシリアルを常食している方は、サプリメントとの併用に注意が必要です。

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